おがさわらなるひこのオープンソースとかプログラミングとか印刷技術とか

おがさわらなるひこ @naru0ga が技術系で興味を持ったりなんだりしたことをたまーに書くブログです。最近はてなダイアリー放置しすぎて記事書くたびにはてな記法忘れるのではてなブログに移行しました。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
特に断りがない場合は、本ブログの筆者によるコンテンツは クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。

(メモ)Jenkins/GitLabをお試しする環境をDockerで構築する

最近、JenkinsとGitLabの連携機能とか、Jenkins Blue Oceanを試したりしています*1。 で、検証環境を手元にほしいのですが、GitLabの構築めんどくさそうだったので、Dockerだったら楽なんじゃないかなという*2。 docker-composeとかを使うところなのかもしれないですが、素朴なので手でコマンドを叩いてやってみました。

便利だったのでメモ。今更感アリアリですが。

ネットワークの作成

今回二つのコンテナを準備してそれぞれを名前解決したいわけですが、そのためにはネットワークを作るといいらしい。

参考:

qiita.com

ふむふむ、やってみましょう。

 % docker network create --driver bridge gitlab
 【ID文字列】
 % docker network inspect gitlab
[
    {
        "Name": "gitlab",
        "Id": "【ID文字列】",
        "Created": "2017-12-20T05:45:30.1592604Z",
        "Scope": "local",
        "Driver": "bridge",
        "EnableIPv6": false,
        "IPAM": {
            "Driver": "default",
            "Options": {},
            "Config": [
                {
                    "Subnet": "172.18.0.0/16",
                    "Gateway": "172.18.0.1"
                }
            ]
        },
        "Internal": false,
        "Attachable": false,
        "Ingress": false,
        "ConfigFrom": {
            "Network": ""
        },
        "ConfigOnly": false,
        "Containers": {},
        "Options": {},
        "Labels": {}
    }
]

Jenkinsの起動

さっき作ったネットワーク gitlab を使って構築するようにします。コンテナ内の /var/lib/jenkins はコマンド実行時のディレクトリ直下の jenkins-master というディレクトリにマウントするようにしました。コマンドは公式ドキュメントを参照。

-name で名前つけてあげないと、コンテナ間の名前解決できないようなので。

docker run --detach -p 8080:8080 -p 50000:50000 -v `pwd`/jenkins-master:/var/jenkins_home --name jenkins --net=gitlab jenkins/jenkins:lts

GitLabの起動

こっちも公式ドキュメントを参照。

docker run --detach \
    --hostname gitlab.example.com \
    --publish 443:443 --publish 10080:80 --publish 10022:22 \
    --name gitlab \
    --restart always \
    --volume `pwd`/gitlab/config:/etc/gitlab \
    --volume `pwd`/gitlab/logs:/var/log/gitlab \
    --volume `pwd`/gitlab/data:/var/opt/gitlab \
    --net=gitlab \
    gitlab/gitlab-ce:latest

接続確認

手抜きで片方向だけ。

docker exec -it jenkins /bin/bash
jenkins@3c121fdb1b14:/$ ping gitlab
PING gitlab (172.18.0.3): 56 data bytes
64 bytes from 172.18.0.3: icmp_seq=0 ttl=64 time=0.386 ms
64 bytes from 172.18.0.3: icmp_seq=1 ttl=64 time=0.122 ms
^C--- gitlab ping statistics ---
2 packets transmitted, 2 packets received, 0% packet loss
round-trip min/avg/max/stddev = 0.122/0.254/0.386/0.132 ms
jenkins@3c121fdb1b14:/$ exit

いけてますね。

GitLabの外部名変更

http://gitlab になってればいいらしいので。

 % docker exec -it gitlab /bin/bash
root@gitlab:/# vi /etc/gitlab/gitlab.rb
(編集)
root@gitlab:/# exit
## GitLab URL
##! URL on which GitLab will be reachable.
##! For more details on configuring external_url see:
##! https://docs.gitlab.com/omnibus/settings/configuration.html#configuring-the-external-url-for-gitlab
external_url 'http://gitlab'

こんな感じで書き換えて docker restart すればうまくいきました。

Jenkins側の名前設定

こちらはGUIでポチポチ変えるだけ。[Jenkinsの管理] > [システムの設定] > [Jenkinsの位置] にて http://jenkins:8080 にします。「リバースプロキシの設定がおかしいようです」と言われますが無視して大丈夫です。

できた!

JenkinsにGitLabプラグイン入れて簡単な設定をしてみたらちゃんと二つのコンテナ間でやりとりできているようです。

ホストマシンをうっかりリブートしてコンテナが止まっていても docker restart すればさくっと再起動するので楽です。

ただ、手元の環境だとコンテナ2個上げるとホストマシン側が目に見えて遅くなるのが少し困りどころですね。まあ、我慢できなくはないですけど。

*1:何周遅れなんだよという気が自分でもしています。

*2:何周遅れなんだよという気が自分でもしていますAGAIN。

執筆報告: 日経Linux 2018年1月号

お声がけいただきまして、日経Linux 2018年1月号 特集1「大幅刷新!始めるなら今 新しいUbuntu完全ガイド」に記事を書きました。12月8日発売。

(上のリンクはアフィなので、踏みたくない人は自分で適当に検索してくださいませ)

この特集自体は読者として読んでもとっても面白いのですが、その中の1ページ……具体的にどこかってのはこのブログをお読みのかたは想像できるのではないかな……プリンターとスキャナについてですえ、を担当させていただきましたです。

筆者の役得としては、才人揃いのUbuntu Japanese Teamの皆さんに混ぜてもらって、その原稿やらゲラやらを先行してみられるというのがあって、いやーみなさん題材の選定から技術的な誠実さから最終的な読み物としての完成度も面白さ本当にすごいなあって思います(小学生みたいな文章ですみません)。その中に交じるのはプレッシャーもありますけどとてもハッピーです。私としては。

相変わらず字数数えられないやつで盛大にはみ出たのですが、そのはみ出た部分についてはまたいずれ。具体的には、ドライバーレス印刷対応の機種だけど俺はベンダー製ドライバーを使いたいんじゃ! という人向けの記述が落ちてます。まあそこ調べが足りなかった(例えばHPLIP対応機種でどうするかとか)ので、別の機会になったほうがよかったですね。

あと、ニュース欄にopenSUSE.Asia Summit 2017 Tokyoのレポートも載ってますが、こちらの執筆もちょっと手伝いました。

ついでにもう一つ、一つ前の号にもLibreOffice 5.4についてのニュースを1ページ書いたのここでお知らせするの忘れてたので。LOOLについてもほんのちょっとですが触れました。

そんなわけで、ぜひ購入お願いします!

(小ネタ)LibreOfficeと笑顔

adventar.org

5日目*1。4日目は Arachansan さん(さんが重複)が書いてくださいましたありがたやありがたや。

今日もまた超小ネタです。

TDFのブログにて「LibreOffice Community Smiles」という連載が始まっております。コミュニティメンバーの素敵な笑顔の写真を毎日紹介するというもの。

みんないい表情!

LibreOfficeコミュニティはそんなに大きくないこともあって家族的だとぼくは思うのですが、それらしい連載だなあって思ってます。過去にTDFブログではAdvent Tipsとかアドベントカレンダー的な連載があったので、これもその一環なのかな。いろんな笑顔がみられると嬉しいですね!

明日はtokyrahさんです。よろしくお願いします!

*1:今日の夜予定があるので、ササッと書いて公開して、Adventarにリンク貼ろうとしたら、 nogajun さんが立候補していただいていました。それならそれでいいやと思ったのですがnogajunさんに気を使っていただいてずらしていただいたので。すみませんすみません。

LibreOfficeとCJK

adventar.org

三日目。昨日は@arachan@githubさんによる「Python odfpyでDrawファイルを弄る」でした。

さて、今日も小ネタです。

先日同じことを書きましたが、

The Document Foundationの「Next Decade Manifest」に、つぎのような表現があります。

私達の立場:
すべての人が、私たちのオフィススイートを母国語に翻訳し、母国語で文書化し、母国語でサポートし、母国語で普及ができるようにして、母国語の保護を支援します。

この立場に立って考えると、我々日本語話者が母語*4 である日本語でオフィスソフトを使うためには、単にUIが翻訳されているというだけではなく、日本語……それに限らず、中国・台湾・韓国……つまりCJKが正しく使えることが大事なのです。 ですが、自分自身の使っていない言語について「正しい」かどうかを判断することはとても難しいので、CJK文化圏で協力して、自分たちで不具合を直し、機能を正しく実装していくことが大事です。

って、この↑文章を読んだ人ならすでに読んでるとは思いますが、今年のLibreOffice ConferenceおよびLibreOffice mini-conference Japanで榎さんが本件についてまとめているので、そのスライドを読みましょう。

さくっとまとめれば、日本語についてはやっぱりユーザーも開発者も(世界的に)すくないので、不具合を見つけたら(開発者が目につくところで)表明する、不具合報告の切り分けに協力する、もしかしたら直すのに挑戦する、といったことです。

ということで、スライドからの抜粋に近い形ですが、参考情報のリンクを紹介します。今回はCJKに限った紹介ですので、CJKに限らないグローバルな開発やQAについての情報については省略します。

日本語の不具合について相談する日本語の場所

あんまりないんですよね。1日めのエントリーに書いたようにSNSでカジュアルに相談するのはテかもです。

メーリングリスト

メーリングリスト | LibreOffice - オフィススイートのルネサンス

The Document Foundationによってホストされているメーリングリストは、こういうお話をするのに公式的な場所です。

一般的に投稿可能なリストは users@ と discuss@ と二つありますが、両者の使い分けとしては:

  • users@ - ユーザーとしての使い方などの情報交換
  • discuss@ もう一歩踏み込んで、コミュニティに参画したいと思う方の議論の場。例えばLibreOfficeの日本語化についてなど。

今回のネタに関してで言えばどちらでもよいです。自分の立ち位置で好きな方を選んでください。Nabbleというサービスを経由すればWebベースで投稿もできます。昔記事を書いたので参考になれば*1

LibreOfficeの多くの開発者は残念ながら日本語を介さないのですが、日本語話者の間で「この障害他の方再現しますか?」「どなたか情報お持ちですか?」といった情報を交換することができます。場合によっては、後述のBugzillaに障害を報告するのに手伝ってくれる人がいるかもしれません*2

AskBot

Questions - Ask LibreOffice

LibreOfficeについての質問とそれに対する回答を日本語で行えます(/ja/en にすれば英語サイトにもアクセスできます)。StackOverflaw的なといえばピンとくる人もいるかもしれません。今だとLibreOfficeのメニュー「ヘルプ > オンラインで助言を求める」からたどり着けるので、意識せずに利用されている方もいらっしゃるでしょうか。

このサイト自体は不具合報告の場所ではないのですが、「この動き不具合?それとも仕様?」みたいな質問をすることはできます。残念ながらいまだと質問する人も、なにより回答者が足りてない感があるので、皆さんどしどし使ってくださいませ。こういうことなら自分回答できるよ! という人は超ウェルカムです。

日本語(に限らずCJK)の不具合について相談する英語の場所

ということで以下は英語になります。

Bugzilla

Bugzilla Main Page

相談というか不具合報告の場所ですね。ただ、もちろん不具合チケットの上で議論することもありますけども。

TDFのBugzillaには「バグを集積するバグ票」である「メタバグ」というものがあって、CJK周りは次の二つのメタバグをウォッチしておくのがいいです。「このバグすでに報告されてるのかなあ」という場合もこれを見るといいですね。

他にも、以下のメタバグも関係あるかも*3

「俺の報告したバグ票をメタバグに紐付けるにはどうしたらいいの?」というのはメーリングリストなどで聞いてくださいませ。基本的にはバグ票のDepends OnにメタバグのバグID(例えば日本語メタバグなら113195)を指定すればいいだけのはず。

Telegram

初日のエントリでも紹介しましたが。

LibreOffice CJK

先程のメタバグに報告するのが重いなーという方はこちらでまず相談するのがいいかもしれません。ここにはLibreOffice WriterのCJKバグをもりもり直してくださっている台湾のMark Hung氏が常駐してるので、Writerのバグについては特におすすめ。

開発参考資料

俺はLibreOfficeのCJKのバグを直したい! っていう人に開発参考情報をご提示したいのでございますが、私かなり昔にトライして挫折したので……。

ちょっとURLを見ると悲しくなるのですが、レンダリング系についてはこちらがとっかかりかなあ。

Writer/Text Formatting - Apache OpenOffice Wiki

前述Mark Hung氏に(月曜日夜10時の台北市内のモスバーガーで一緒に晩御飯を食べながら聞いたところ)、これも昔のブログ記事からの引き写しになりますが、

OOoの開発Wiki。あとはカンタンなバグを直して、またもう少し難しいバグを直しての繰り返し。近道はないよ

とのことなんで、みんな頑張りましょう。

個人的には、少なくとも関東と関西、さらに台湾とオンラインでつないで開発HackFestをやりたいなあって思ったりしているので、やるなら俺も参加したい! という方、個人的にお声がけくださいませ。

明日のカレンダーはまだ空席なんですよね。誰か手を上げてほしいです><

*1:昔の記事なので最近の状況は把握はしてません。もし現状と乖離してたらごめんなさい。そのときは教えていただけると嬉しいです。

*2:ボランタリーな活動なので、保証はできませんが、多くの人がみている場所のほうが協力者が得られやすいのは当然です。

*3:すみませんあまりちゃんとみられていません。

LibreOfficeとSNS

2017年のLibreOffice Advent Calendar始まりますよ、と。

初日なので小ネタでご挨拶。こんなネタでもいいので、皆さん書いて書いて。

LibreOfficeの話題を扱う公式非公式なSNSなチャネルをご紹介します。

Twitter

私が一番文字数を読んで書いているのはTwitterだと思います。そんなTwitterにもLibreOfficeの情報は色々と。

Facebook

ギークな人たちはTwitterよりFacebookなのかしら。若い人たちはそうでもないようですけど。

Google+

私はたまーに英語のポストをするだけなんですけど、LibreOfficeの開発者は割とこっちにいることが多いみたい。あまり知りませんが……(補足があったらコメントで教えてください)。

Telegram

チャットアプリTelegramにもLibreOfficeのチャンネルがいくつかあります。IRCともブリッジしてたりするので、IRCを除けば一番活発なのはここかも。

  • LibreOffice グローバルコミュニティのチャンネル。イベント写真とかアップすると反応がいいです :)
  • LibreOffice QA 品質保証チームのみなさんのチャンネル。「これバグかな? 起票したほうがいい?」みたいなのをカジュアルに聞くならここ。ただし猛烈に流量が多いです。
  • LibreOffice CJK LibreOfficeのCJK(Chinese = 中国語、Japanese = 日本語、Korean = 韓国語)について話し合うチャンネル。CJKバグについて話すならこのチャンネルがベター。

もちろん公式な議論の場であるメーリングリストもありますが、SNSをうまく使うと情報を手早く入手できたり、カジュアルな相談ができたりするので、うまいところ使っていきましょう!

LibreOffice mini-conference 2017 Japan (in openSUSE.Asia Summit 2017 Tokyo)

もう一月近く経ってしまったのですが、10月22日に、LibreOffice mini-conference 2017 Japanというイベントをやりました。参加いただいた皆様ありがとうございました。

このイベントは、10月21日、22日に、調布の電気通信大学で行われたopenSUSE.Asia Summit 2017 Tokyoの「イベント内イベント」です。

昨年末に行われたLibreOffice Kaigiが「日本語ユーザーによる日本語ユーザーのためのイベント」であり、それを象徴するように日本語の「会議」から名前を取って「Kaigi」にしましたが*1、「mini-conference」は、ヨーロッパの年次会議LibreOffice Conferenceのように、グローバルなカンファレンス(だけれども地域的)というのを目指したイベントです。

正直な話、LibreOfficeの日本コミュニティだけで国際イベントをホストするのは難しいけどやりたいなあと思っていたところ、openSUSE.Asia Summitの手伝いをすることになったので*2 じゃあ一緒にやりましょうということにさせてもらいました。

幸いなことにThe Document Foundationから「登壇者の旅費を補助していいよ」と言ってもらったので、シルバースポンサー扱いとさせてもらいました。日本、台湾、インドネシアと3カ国、6人の登壇者+LTと、まあなんとかmini-conferenceとして格好がついたと思います。ありがたやありがたや。

f:id:naruoga:20171119204652j:plain

オープニングトーク: "LibreOffice: The Office Suite with Mixing Bowl Culture"

私のトークです。

実行委員としてCall for Proposalの告知を出して、はーやれやれと思ったところで「当然、トーク応募してくれますよね?」「うーんでも最近あんま活動してないから取り立てて面白いこと話せないからなあ」「でも、今回はopenSUSEのイベントなので、openSUSEな人たちにLibreOfficeってどういうものかをちゃんと説明するような講演があってもいいと思いますよ?」「うーんそれなら、TDFのオフィシャルプレゼンを眺めながらなんか提案作れるかも」ってことで題材を決めて話したものです。

TDFのオフィシャルプレゼンというのは↓

File:Final-libreofficeintro.odp - The Document Foundation Wiki

これで、このスライドの中で「Umbrella Culture」と「Mixing Bowl Culture」という図があって、おおこれ、と思ってタイトルにいただきました。

自分がなんでLibreOfficeというプロジェクトに関わり続けているかというと、このプロジェクトはやっぱり「何かやろうとする人に対しては優しい」ことなんだよなあと思うのです。誰でも参加できるんだよ、誰が特別ということはないんだよ、ということを表すいい言葉だなーと思ってですね。

別に新しいことを何かお伝えするプレゼンではなかったですが、自分なりに言わんとしていることは表現できたかなー、とちょっぴり自画自賛。ただ、昔からこのプロジェクトに関わってきた人には少しつまらなかったかもしれません。それはしょうがないね。

”The Interoperability of Documents" by Franklin Weng

前日の「TDFメンバーになろう!」というLTが超ウケていた、台湾のFranklin Weng氏によるプレゼン。

「最初はODF vs. OOXMLという内容を話そうと思っていた。しかしそれよりも重要な視点があることに気づいた。文書の相互運用性についてだ」

という口切りから、彼らしい話術で時には笑いを誘いながら、デジタル時代の文書作成において相互運用がどれだけ大事であるか。「ドキュメントの相互運用とはドキュメントを交換できることではない。共同でよりよく作業することだ」。そのためにはODFのようなオープンな標準を用い、スタイルなどの機能を適切に用い、オープンなフォントを用いること。

「国際標準フォーマットという意味ではOOXMLもISO標準ではないか」という点についても、仕様の安定性、シンプルさなどの点からODFのほうが優れているということを、最新のLibreOfficeで作成したプレゼンテーションをLibreOffice 4.0という非常に古いバージョンで開いても正しく開けるというデモを交えて説明していました。

ドキュメントの相互運用性という視点は、たまたまではありますが、今回のmini-conferenceを通したテーマになっていたと思います。さすがのFranklin、非常に面白い内容でした。

"State of CJK issues of LibreOffice" by Shinji Enoki

今年イタリアはローマで行われたLibreOffice Conferenceの参加者シャツ*3 を着て登壇したLibreOffice日本語チームの榎さんは、ローマで行ったプレゼンの再演として、LibreOfficeのCJKに関する問題についてまとめたプレゼンを行いました。

The Document Foundationの「Next Decade Manifest」に、つぎのような表現があります。

私達の立場:
すべての人が、私たちのオフィススイートを母国語に翻訳し、母国語で文書化し、母国語でサポートし、母国語で普及ができるようにして、母国語の保護を支援します。

この立場に立って考えると、我々日本語話者が母語*4 である日本語でオフィスソフトを使うためには、単にUIが翻訳されているというだけではなく、日本語……それに限らず、中国・台湾・韓国……つまりCJKが正しく使えることが大事なのです。 ですが、自分自身の使っていない言語について「正しい」かどうかを判断することはとても難しいので、CJK文化圏で協力して、自分たちで不具合を直し、機能を正しく実装していくことが大事です。

ですので、現状はどうなっているのかをまとめて、共有していくという、榎さんがやっているような活動はとても大事です。

当然、グローバルなコミュニティとしてもその重要性は理解していて、[META] CJK (Chinese, Japanese, Korean, and Vietnamese) language issuesという「メタバグ」や、TelegramのLibreOffice CJKというグループがあったりしますので、このプレゼンで興味を持たれた方はチェックしていただけると嬉しいです。

"Introduction to Japanese Darkness "Excel Houganshi"" by Rin Nakamura

Excel方眼紙」を題材にしたプレゼン、というだけで面白さが保証された内容をお話いただいたのは、関西LibreOffice勉強会などでおなじみの中村さん。豊富な実例を交えてExcel方眼紙の何がよろしくないかを話していただきました。たくさんの笑いどころが含まれたプレゼンで大変に面白かったです。

面白おかしいだけではなく、Excel方眼紙を読みやすいドキュメントにまとめるライブデモは見ごたえがありました。

先程の繰り返しになりますが、ドキュメントの相互運用とは他人との作業の協調である、という視点から考えると、Excel方眼紙は最終的な見た目だけしか考えておらず、相互運用という意味ではまったく劣ったドキュメント形式です。「道具は正しく使ってください」という中村さんのメッセージは、当たり前にも聞こえますが、今回のmini-conferenceにおける最も重要なメッセージだったと言えるのではないかと思います。

"Write Your Story with OpenSource" by Umul Sidikoh

インドネシアの若き女性オープンソース愛好家、Umulは、Writerの機能を使って長文を書くテクニックについて、実演を交えて話してくれました。

正直なお話、もうちょっと内容については詰めておけばよかったかなあと後悔したりもしましたし、デモを交えてお話するのは少しチャレンジだったかな……? という印象を受けましたが、彼女にとってはこれが初の海外なのだそうで、若い人にそういうチャンスを上げられたということで、それは良かったと思います。できれば、今後ともインドネシアの他のLibreOfficeコミュニティメンバーともコンタクトをうまくとって、活動を継続してもらえたらなと思います。

彼女のテーマであるWriterの機能をちゃんと使って文章を書きましょうという話は、ドキュメントの相互運用性を高めるために道具を正しく使う……という視点で筋が通っていて、そういう意味で(別にそういう示し合わせがあったわけではまったくないのですが)mini-conferenceの一つの講演としてよかったです。

"How to build LibreOffice on your desktop" by Masataka Kondo

LibreOffice日本語チームの近藤さんは、「自分のデスクトップでLibreOfficeをビルドしてみようよ!」というプレゼンをしてくれました。

オープンソースなのだからまずはビルドから初めてみない? というのは、mini-conferenceの締めくくりにふさわしいトークだったと思います。

私はUbuntuなので apt-get build-dep libreoffice してから、configureしてコケたメッセージをみながら足りない部分をちょこちょこ入れていくという手順でやっているのですが、ゼロから足りないモジュールを探していくのも勉強になるかもしれないなあと思いながら聞いていました。

Franklinから「dockerを使えばビルド環境をかんたんに構築できるんじゃないか?」といったコメントも出ていました*5。これについては私も試してみたいですね。

そして二つのLT

アイクラフトさんでインターンをしている、Mohamed TRABELSIさんとAschalew Arega Ademeさんが、LibreOfficeについてのLTをしてくれました。チュニジアエチオピアという、それぞれの国の事情がわかって非常に興味深いLTでした。

まったくまとまっていないまとめ

いろいろ大変で、しばらく燃え尽き症候群でぐったりしていましたが、思ったよりもずっといいイベントになったかなーと思います。

登壇してくれた、参加してくれた、手伝ってくれた皆様、本当にありがとうございました!

f:id:naruoga:20171119222828j:plain インドネシアのEdwin Zakaria氏による、登壇者・関係者全員によるグループフォト@LibreOfficeブース

*1:もちろん、RubyKaigiのリスペクトというのもあります。

*2:自分でも不思議なのですが、私openSUSE.Asia Summitの実行委員に、2014年の初開催時から入れてもらっているのです。大変名誉なことでありがたい。

*3:これがなかなかカッコよくて、行けなかったのがぷち悔しい……。

*4:私個人としては、mother tongueの訳語としては「母語」が好みです。

*5:https://github.com/FreeSoft-AL/libreoffice-compile こちらに情報があるそうです。

ぼくのなつやすみ - OSC京都からCOSCUP、台湾観光など -

ちゃんと書いてなかったけど口頭では色んな人に言ってたしSwarmで居所垂れ流してたので知ってる人は知ってるでしょう。8/4から夏休みをいただいてOSC京都からCOSCUPをはしごして台北を観光してきました。

OSC京都

OSC京都は久しぶりに金曜日から参加。だいこん行きたい!ってワガママを言ったらアレンジしてくださって感謝感激。だいこんも天然記念物だなあ。残りの人生であと何回行けるだろうか……。

相変わらずLibOのブースで自前でビルドしたLOOLのデモしたり最新5.4の機能紹介したりしてました。ブースの手伝いするよと事前に一言も言ってないのに勝手にデモ機を置いたりして酷いやつです我ながら。

お隣のアイクラフトさんでNextCloudと組み合わせてちゃんとネットワークの向こうに置いたLOOLのデモをやってらしたので、こっちはややギーク目な解説に振ってみた(実際の使い方は隣を見てってねと誘導)のですが上手く住み分けできてましたかねえ。というか、隣のブースなのにちゃんと挨拶もしてなくてすみませんすみません(人見知りなもので)。

OSCのアンケート見たら「LibreOfficeのブースが面白かった」ってのがひとつだけあったのですが、アイクラフトさんのブースの方が明らかに客付きがよかったのでそっちの可能性が高いですね。まあでもこちらのとしては楽しかったです。

あとUbuntu KRのDrake Songさんのお話は面白かった。

COSCUP

土曜日8/5は展示の片付けまでは手伝って、懇親会を(残念ながら)パスして関空に移動して台北まで。夜中でも普通にバスが動いててびっくりしました。

で、日曜日だけCOSCUPに参加。ずーっと参加したいしたいと思っててようやっと。実は行こうと思ったときにはすでにチケット完売してたので、台湾LibOコミュニティの牽引役で何かとお世話になっているFranklin Weng氏にお願いして入れてもらいました。ワガママ言ってごめんね。

中国語はまったくわからない(いや英語もあんまりできませんが)ながらもスライドは英語だったし、プログラミング系はコードは各国語共通なので楽しめました。OSSコミュニティについてのトラックとかも興味を惹かれたんだけどきっとハイコンテクストすぎて難しいかなと思い断念。

すごい熱気があるのと、なにより若い人がいっぱいいてうらやましいなって思いました。開発系のコミュニティ(RustとかGoとか)が混じっているからかしらねえ。

次回は可能なら土日、ちゃんとチケット取って行きたい。できれば発表とかもしたいな。

観光とか

あけて月曜日8/7はホテルを出てふらついていたら総督府とか中正記念堂とかの方に出たのでそのまま見学。記念堂の展示、勉強になったけど、なんというか、気持的に微妙だなと思いました。それから台北101に出てごはんたべたり展望台に上がったり。一旦ホテルに戻ってから北門を見たり。くたびれたけど楽しかった。

そして夕方はItalo Vignoli氏と台湾コミュニティのミートアップに混ぜてもらう。場所はMozilla TWの持つハックスペースで、電気街の雑居ビルにあってなかなかおもしろそうな場所。

いろんな議論は興味深かったです。このイベントについてはリンク先参照のこと。あと、月曜の夜という時間にも関わらずすごい沢山の人が集まっていてすごいなって思いました。

そして、イベント後にLibOのCJKバグをたくさん修正しているMark Hung氏と一緒に食事に行き色々と話す。CJKバグを直してみたいって思った場合コードのどこ参照すればいいとかってある?って聞いたら「OOoの開発Wiki。あとはカンタンなバグを直して、またもう少し難しいバグを直しての繰り返し。近道はないよ」っていわれました。そりゃそうだ。それとやはり台湾コミュニティでも若者はデスクトップアプリケーションに関心をあまり示さないようで、他の国、例えばヨーロッパとかはどうやってるんだろうねえって話をしたりもしました。

8/8はスーパーマーケットに行ってオミヤゲのインスタントラーメンを購入後、前述FranklinがItaloと一緒に故宮博物院に連れて行ってくれました。素晴らしい美術品の数々でぼくの語彙ではとても表現できないんだけど、「いやー君はなんで白菜をこんなに美しく作る必要があったのかね?」とは思いました。すばらしい。私のフライトがちょっと早めだったのでみんなを早々に切り上げさせてしまったのが申し訳ない&自分としても残念。ぜんぜん時間足りなかった。また行きたいな。で、松山空港まで送ってもらって解散。

ちょっと日程が(思ったより)カツカツで夜市とか行けなかったりあんまり台湾っぽいものを食べられなかったりしたのは残念なんだけど、まあこれも次回に行く機会ができたと思えば……ね。

そんなわけで、現地でお世話になった皆さん、日本でお休み快諾してくれた皆さん、ありがとうございました。

写真は北門公園の夕暮れ。

参考記事:Italo Vignoli氏の台北報告。

blog.documentfoundation.org