おがさわらなるひこのオープンソースとかプログラミングとか印刷技術とか

おがさわらなるひこ @naru0ga が技術系で興味を持ったりなんだりしたことをたまーに書くブログです。最近はてなダイアリー放置しすぎて記事書くたびにはてな記法忘れるのではてなブログに移行しました。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
特に断りがない場合は、本ブログの筆者によるコンテンツは クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。

年齢が半分ぐらいの人に向けてのなにか

2011.03.09 追記:なんか一方的な大企業否定に読めてしまうので、ちょっとそこのところ補足します。ちょこちょこいじって申し訳ない。


なにやら世間様では新卒で入ってくる技術者に対して言葉を綴ってあげようという催しが行われているようでございます。
謙遜でもなんでもなく、技術者としても平凡以下で社会人としても最低ランクの評価である私がそんなヒトサマにアドバイスなんてものを贈るような晴れがましい行事に参加できるわけはないので、こういう辺境の地で「アドバイスではないなにか」を書くのです。


私の立ち位置として、

  • 「元」エンジニア。今は社内ニート
  • 40歳まであと18日
  • 連結売上高2兆円超、連結従業員数11万人弱の大グループの親企業の従業員

であるということは申し上げておくとしまして。

大企業に就職した皆様へ

この不況下に安定した収入と身分を得られたことに、まずはおめでとうございました。

で、あえていいますが、もしあなたがハッカー的指向を強くお持ちであるなら。
言い換えれば、会社のルールよりも個人の規範を大事にし、それはなにより自分が気持よくコードをかける環境にいられることを優先しており、社内外問わず技術を交流することを指向し、自分自身の技術が世の中に貢献しているさまを自分の目で見なければ済まないような人ならば。

今あなたが得た地位と収入を地味に確保して生活を維持しつつ、次のキャリアに移ることも視野に入れておいたほうがよいと思います。
あなたが、あなたより思いも技術もないとしか思えない、会社の決まりに唯々諾々と従うことしかできないように見える上司先輩の指示によって、どこのスカタン野郎が書いたのか分からないゴミクズのようなソースコードを、くだらないルールにしたがってひたすらメンテしデバッグし、月100時間残業して、魂をすり減らす前に。

自由は勝ち取るもの、理解者は一緒に戦ってはくれない

運がよければ、あなたの能力を見込んで、不合理なルールを違反することを黙認し、面白い仕事を与え、外部との交流の機会を積極的に与えてくれる上司先輩がいるかもしれません。
研究職で採用された人なんかだと、最初からそういう環境が約束されているかも知れませんね。

ですが、会社という場所で一番力を持っているのはあなたの上司先輩ではありません。
ある日突然上司が代わって、その上司が「コイツはオレの指示に従う意志を見せない」とさらに上の階層、あるいは人事に告げたとしたら?
あるいは、あなたのすぐ上の人はあなたを理解してくれていたとしても、その上の階層、たとえば部長とか事業部長といった人たちがガラリと入れ替わったら?
研究所なり事業部が解体したら?

あなたの理解者は、みんな自分自身の生活を持っているんです。自分が安全である範囲で「理解」や「応援」はしてくれるでしょうが、それを投げ捨ててまで、あなたのハッカーライフ、あなたの技術者としての自由のために戦ってくれる人などいません。

ということで、収入と身分の安定と引換に、あなたはハッカーであることを諦めなければならない可能性は常にあるということ、そのときに自由を勝ち取るのは自分しか頼れないこと、そして、社内で勝ち取るより、環境を変えたほうが容易である、ということは知っておいたほうがいいです。

あと10年、いや20年後を目指すのはオッサンの仕事

でもですよ。
会社というのはですね、利潤を追求するのが存在意義なんです。
だから、「エンジニアが自由で幸せであることが、会社の利潤につながる」という証拠を見せさえすれば、会社は必ず変わるはずです。

そして「従業員満足 (ES: Employee Satisfaction) なくして顧客満足 (CS: Customer Satisfaction) なし」は、今や世界的な常識となりつつあると見ています。

ただし、慣性の法則で、大きなものが変わるのには時間がかかる。だから変わるまで待ってる必要はないですよ、というのが上の主張。

思うに、もし若いみなさんが大企業を変えたいと思ったら、もっとみなさんのポテンシャルが発揮できる会社でいきいきと働き、素晴らしいサービスを提供して、大企業でしかできない、例えばハードウェアの製造とかそういったこととコラボレーションして、みなさんのやり方が上手く行くことを見せることです。

そういう事例を見つけ、コラボレーションをアレンジし、企業文化の違いと生産性の違いの相関をアピールし、上申しつづけることは、我々オッサンの仕事であるとぼくは思っています。

10年かかるかも20年かかるかもしれませんが、そのために布石はいろいろ打ってます。
そのときまで、それぞれの立場でがんばりませう。

それでも大企業に残る人へ

一応ですね、大きいわけですから、人も多いわけです。探せば面白い人はいるんです。手段を選ばず、社内で面白い人を探しましょう。手段については、私のやり方は下に書いたつもり。
そして面白い人脈を作っておいて、いざとなれば社内ベンチャーでもなんでもやりゃーいいじゃないですか。
そういう生き方も、楽しいと思うよ。

2011.03.09 追記

あとね、これは大企業否定ではないです。5人10人のスタートアップで世界に名だたるWebサービスは作れるけど、自動車とか複写機とか家電とかの製造、電力やガスや電話電信などのインフラ、鉄道や航空などの輸送業、それらはものすごく膨大な人間が必要で、そういう会社、組織は絶対必要。そしてそういうところにもソフトウェア技術は必要。だから「ソフト屋は来るな」といっているわけでもないです。
ただハッカー的な人には生きにくいところでもあるというのが現実であるということを書いているだけです。だから、「ハッカーになることがソフト屋にとって幸福になる道である」という考えを持っている方は、別のプランを考えておけということ。しかし後述するように、それ以外の価値観だってあるわけですから、ハッカーであることを捨てて世の中に貢献する道だっていっぱいありますから、そこは誤解なきよう。

2011.03.09 追記終わり


……以上、大企業に入る人向けのお話。以下一般論。

人を dis るな、行動を dis れ、想像力をたくましく

仕事をしているとあなたと利害が対立する人が必ず現れます。

納期間際だというのに仕様変更を突っ込む企画。
ものすごい工数を必要とする特別注文を見積もり0円で上げてくる営業。
すでに「もう直せません」と周知済であるバグを報告してくるテスター。
ソースコード上に変更理由をコメントで残しましょう」とかのクズなルールを強制する「開発プロセスなんちゃら」とかいう部署の連中。

そういう人たちに対して口汚く罵る前に、「なぜ」そういうことが起きるのか想像してみましょう。
みんな仕事で、業績に貢献するために一生懸命やっているはずなので、悪意があるわけじゃないですよね。単に、あなたと立場が違うから、違う主張が生まれるわけで、それに対して攻撃的な態度で接しても、いい結果が得られるはずはないです。

どんなに理不尽なことをいわれたときでも、相手の立場を考えましょう。「そういう結論になるのは何故?」と想像してみましょう。もし想像だにつかなかったら、勇気をふりしぼって担当に直接聞いてみましょう。こちらの立場を主張するのではなく、向こうの立場を聞くのです。そしてこちらの立場と相手の立場を付きあわせて、自分なりの答えを出してから、それで周りに相談してみましょう。

悲しいかな、余裕がない組織だと「過剰に攻撃的になることにより自己保身を図る」という傾向があるので、周りに相談した時点であなたの努力はムダになる可能性も高いですが、そういう考え方をすることは絶対にあなたの財産になるはずです。

ビジネスを知るということは、金勘定ができることではない

私が財務帳票の類をまったく読めない素人だから負け惜しみなのかもしれませんが、エンジニアにとって重要なことは、そもそも顧客に「お金払う価値がある」と思うものをつくることじゃないですか? それと財務帳票はつながりますか?

起業したいのならもちろん別ですが (そして、その選択肢はつねに持っていていいと思いますが)、今あなたがやっている仕事については、叶うならその顧客、それがムリなら顧客に接点を持っている人たち、そういう人たちとフランクに意見を交換しあって、なにを提供すれば価値になるかを知ることこそが大事なのではないでしょうか?

逆に、こちらからシーズを提供して、ここから顧客価値が提供できるかという問いを発してみると、思わぬ答えが帰ってくるかも知れません。

そういう関係を社内外問わずどれだけ持てるかが、自分の技術をお金に変える力になると、私は信じています。

先程のエントリーはここにつながっていて、「私はあなたのために一生懸命考えています」というメッセージが伝わっていれば、何か困りごとがあったときにあなたの顔が浮かぶはずです。情けは人のためならず。

価値観は一つではない、自分のために他者を尊重しよう

こんな辺境のブログを読んでくださっているあなたは、学ぶことに熱心で、技術力を高めることにプライベートタイムを注ぎこむのは当たり前だと思っている方なのではないでしょうか?

そうじゃないんです。当たり前じゃないんです。世の中には給料分仕事して、あとはプライベートを楽しく過ごせればそれでいい、指示された仕事を着実にこなせればそれでいい、そう思う人はたくさんいます。そして、それもまた有意義な人生の選択だと思います。

他人を一次元で評価するのは止めましょうよ。技術力のあるなしだけで人間の価値を図る権利、技術力を高める姿勢がないからといって他人の生き方をダメ出しする権利はだれにもありません。そんなことをしたって他人を変えることはできません。

そういう人たちにはあなたにはできない、あるいはあなたがやる価値を見いだせない、けど組織でやっていくには必要ななにかを着実にこなしてくれるかもしれないんですよ? ならば、彼らの価値観を受け入れた上で、こちらの価値観も話し、相互に理解して分業に努めましょうよ。周りをバカにしてギスギスしながら仕事するより、その方が絶対楽しいと私は思うな。

ググり力を高めるために本を読もう

これは過去のブログエントリで書いたから細かくは書かないけど。紙の本をひたすら読みましょう。
専門ベタベタではなくて、むしろ基礎教養的なこと、プログラミング言語とか、アルゴリズムとか、プロトコルとか、API とか、そういうことこそ本で読みましょう。
本を読むことで目次と内容のヒモ付けができれば、検索キーワードが脳内に溜まっていくのです。そうすれば「この内容だったらこういうキーワードで探せば……」という精度が上がっていくと。
だから敢えて電子書籍や Web のチュートリアルは薦めないのです。検索性が良すぎるから。

最後に:Should で生きるな、Want で生きろ

言葉通りだから説明しなくていいですよね。

あなたの人生なんです。

「○○すべき、といわれたからこうした」

というのが一切ダメとはいいませんが*1

「〇〇したい、だからやった」

とできるだけ言いたいですよね。

だからこのエントリも、「こう書いてあったから」じゃなくて「書いてあることに共感したら」実践に移してくださいナ。


しっかし、まったく技術的じゃないな……。

*1:特に経験がない間は、「好きなようにやれ」っていわれても困るでしょうし。