関東LibreOffice勉強会(#4)
関東LibreOffice勉強会(#4)、先日開催しました。
やるまではもうなんかしんどくてやる気出なくて、続けてさえいれば意味が出てくるとか書いてるけどそんなの幻想じゃないだろうか、こんな勉強会誰にも必要とされてないんじゃないか、そんなふうに思えてしょうがなくて、弱気なこともいっぱい書きましたが、結果としては私(と会場側の IIJ の細野さん) を含めて11人集まってくれたし、結構議論も活発だったので、こうなるとまた続けようかなって思うよね。
ということで最近サボっててレポート書いてなかったんですが、今回はレポート書きますです。
関東LibreOffice勉強会とは
を説明するスライドは毎回作ってるんですが(毎回内容ちょっとずついじってるので手作り感にあふれてますですw)今回はこんな感じでした。
あと Wiki ページもあります。
スライドでも Wiki でもあとついったあたりでも繰り返してるんですけど:
- 内容は LibreOffice に絡むものならなんでも
- 都内で平日夜に 90 分 + 宴会
- 毎月開催を繋げたい
- 始終集まっていればなんか面白いことが起きる……といいな
っつーことです。いまんとこ「面白いこと」は起きてるかというと微妙だけど、まだ諦めるには早いからがんばりまっす。でも、手伝ってくれる人は欲しいなぁ……。
今回のテーマ:LibreLogo
LibreLogo は LibreOffice のワープロソフト Writer の上で動作するプログラミング言語 Logo 風味のプログラミング環境です。この日記でも何度か取り上げてますね。
http://d.hatena.ne.jp/naruoga/20130114/1358178940
http://d.hatena.ne.jp/naruoga/20130304/1362399488
http://d.hatena.ne.jp/naruoga/20130405/1365109483
Logo という時点でおっさんホイホイなのかと思ってたけど、日本語 LogoWriter なんかは PC-9801 上で動いてたわけだから、教育現場で 98 が置かれるっていうと PC-8001 が出たのが小学校高学年のときの私の世代よりはだいぶ下の世代になるんだなあということを認識した。ぼくにとっては Logo は雑誌の記事の向こうの存在だったからね。
LibreLogo 翻訳裏話
ちょっと長いのでここは読み飛ばしていいです。
で、これが最初 LibreOffice Writer の機能拡張として開発されて、そのプレゼン (PDF) は去年行った LibreOffice Conference でも後半だけ聞いて「へー LibreOffice で Logo だなんて、面白いこと考える奴がいるもんだ」って思ったのね。
ところがこれが 4.0 の新機能としていきなり上がっててびっくりした。先のプレゼンにも書いてあるけど、ハンガリーの小学校で教育実践に効果があったということが理由なんじゃないかな。FLOSS に限らず、まずは文教をせめて「子どものときに使っていたのをそのまま使いたい」という欲求で徐々に上の組織に導入していく、という戦略はよくありますからねえ*1。
で、l10n っていう翻訳者向けの ML 読んでたら「LibreLogo は子どもたちが使うものだから母語で使えるのはとても大事だし、マニュアルなどの整備も大事」とか書いてあってまたひっくり返った。え、コマンド翻訳できるの?
そいで試しに「日本語でも翻訳動くの?」って聞いてみたら「確認してないけどそのつもり。多分RTL (アラビア語みたいな右から左に書く言語) も大丈夫じゃないかな、こうやれば Pootle*2 の結果またなくても試せるよ」っていうから、じゃあ訳してみるかってちょっとトライしてみたら、あれ?ちゃんと動かない。
「ねえ、これってなんか動かないんだけど?」ってレポートしたら、「あ、ゴメンゴメン、言語判定のときに西欧諸言語しか見てなかった。どうすべきか仕様考えるからちょっと待ってね」ってことになったので、「慌てる必要はないから、4.1 併せでいいと思うけど……」と返信してしばし放置してた。
そしたら 4.0.1 の直前に急にリプライが来て「動くようにしたつもりなんだけど、試してもらえる?」って言われたので、試したら、おお、たしかに動いてますな。「動いたよー」と返事したのはいいけど、前にちょっとだけ翻訳したときに、これはちょっと全体のポリシーをちゃんと決めないといい翻訳にならないんじゃないかと思いつつ、なんにもやってなかった。だから大急ぎでカバレッジだけ 100% にして出しちゃったから、正直気に入らなくてずっと小骨が刺さったような状態。
ので、今回ちょっとでもいい形にできないかな、と思って勉強会のテーマに選んだわけ。
「ぼくのかんがえたさいきょうのりぶれろご」
さっきポリシーはちゃんと固まってないと書いたけど、いちおう「こうしたい」というのはあったので記録しておきます。
- ターゲットは 10 歳ぐらいまでの小学生らしいので、あまりむずかしい言葉は選ばない。
- とはいえぼくは 10 歳の語彙をよく知らないので、そこら辺は適当
- さすがに小学生では概念的に学ぶ機会がないと思われるもの (sin / cos とか絶対値とか) はそのまま
- 子ども向けプログラミングでは「タイピングがしんどい」らしいので、本家 LOGO は例えば FORWARD なら fd とかそういう省略形が用意してある。日本語の省略形を用意するのは止め、アルファベットの省略形を残す形にした。また IM のオンオフがめんどくさいのでアルファベットのコマンドも原則残した
でもこれじゃ不十分なのは百も承知だったのだな。
勉強会の進め方
まずは先のオープニングトークのあと、こんなプレゼンをしました。
デモもしたので本当は動画で見せたいのですが、時間がないのででもファイルへのリンクだけ。
- コマンドラインでのデモ: "forward 100 left 72" して enter 押しっぱなし。72 をいろいろな値にいじると正多角形が綺麗に閉じたり、星になったりすることをデモ。またこれをコピペして Writer の文書ペインに置くと「実行」ボタン連打が必要になるので、REPEAT [] 構文の説明など。
- https://github.com/naruoga/KantoLibreOffice/blob/master/Apr2013/LibreLogo-Demo1-Function.odt - 関数の定義
- https://github.com/naruoga/KantoLibreOffice/blob/master/Apr2013/LibreLogo-Demo2-Recursive.odt - 再帰の例
- https://github.com/naruoga/KantoLibreOffice/blob/master/Apr2013/LibreLogo-Demo3-Label.odt - Label コマンドを使ってちょっと実用的な例。でもFONTSIZEコマンドは日本語に効かないというバグもあったりして
- https://github.com/naruoga/KantoLibreOffice/blob/master/Apr2013/LibreLogo-Demo4-Snow.odt - マジックアイコンで日本語にぱっと切り替わるデモ付き。雪景色を作るデモ
その後休み時間を経て、別途配布したコマンド一覧を見ていただきながら、次のプレゼンをしました。
本当は書いてあるとおり、グループワークの形にしたかったんですね。というか、ぼくが一方的に講師っぽく喋るスタイルをなんとか辞めたかった。けど、結局ぼくとみなさんの間でディスカッションになっちゃって(これはどういう意図なの? とかの確認があるので、そりゃそうだ)、その意図はあまりうまくいきませんでした。
でも議論としては有意義ではあったと思いますですハイ。
頂いたご意見
- タートルの動きについてのコマンドは全部命令形にするのがいいんじゃないか。昔の日本語 Logo Writer が確かそうだった。そのほうが「タートルに命令している」感が出ていい
- 一旦は小学生対象ということから離れたらどうか。表現以外のポリシーをきっちりとしてコマンドを仕立ててから、教育実践をやっている方に見てもらうのがよいのではないか
- Logo の引数は後置なので「次の」とかそういう表現が多いが、「すすむ」は別に後置でも問題になっていないので、考えたほうがいい物も多いのでは
- 一部の用語 (特に関数) に英語コマンドが欠落しているので修正する
- 意見ではないが、OS X の 4.0.2 だとうまく動かないという情報が。バグレポートなど確認する (といいつつまだできてません。ごめんなさい……)
抜け漏れあったら教えてください。
感想・その他・まとめ
今回はネタがネタだけに辛いかなあと思ったんですが、直前にあった小江戸らぐでちょろっとだけ宣伝したら「Logo?」と食いついてくれた人が数名いらっしゃったので、なんとか無事10人超えで開催できました。
ワークショップとかグループディスカッションみたいなことをやるにはもっとちゃんと事前準備しないとダメですね。あと一人だと「こういうやり方でうまくいくんじゃないのかなー」みたいな思い込みで走っちゃうので、誰でもいいから捕まえて相談したらよかったかもと思いました。あと小道具があったらよかったですね。ポストイットとか。次回、その手のネタがあったら考えたいと思います。
今回の結果は多分一部はとっとと Pootle に反映しちゃいますが、「全部命令形に」みたいな奴は、ちょっとその前にローカルで試せるような方法を検討して皆さんにテストのお願いをしようと思います。
ということで今回の参加者の皆さん、ありがとうございました!
第5回のテーマは相変わらずスピーカー含め募集中ですが、多分5/20の週とその翌週でまた日程調整すると思います。
「今回は自分話していいよ!」とか「こういうテーマで話聞きたい!」とかのアイディアも募集です♪
*1:昔の Macintosh はモロその方向だったし、年齢層は違うけど NeXT でアカデミックディスカウントガンガンやったのもその戦略ですよね。
*2:LibreOffice の使っている Web 翻訳しシステム。ここから定期的に翻訳された結果を取り出してビルドされ、みんなが使うβとかRCとか正式版に入れられる。