IPA「GPLv3 逐条解説書」輪読会 pt.27 に参加した
最近ずっと行けなかったイベントに行ってきた。
しかもついったで「ご飯食べる人いますか」って募集してる人を「食べた後一緒に参加するなら」といってラチるというおまけ付き。主催者の許可無く。ひどいね。
イベントページ見れば分かりますが、IPA OSS iPedia のコンテンツOSSライセンス関連情報にある「GPLv3 逐条解説書」をみんなで読もうというものです。
しばらくご無沙汰な間ずいぶん進んでいて、あれま特許非係争義務とかについて触れられた第10条は終わっているのね。ということで第11条「特許」から。
前回第1パラグラフの解説は読み終えたとのことなのですが、ぼくともう一人は前回いなかったからとワガママいって頭から読ませてもらいました。
論点
ざくっとまとめるとこんな感じかしらね?
- あるソフトウェアを GPLv3 でライセンスするとき、自分がライセンスするものに関して持っている特許があったら、それを全部ライセンスしないとダメ。というのが前提。
- 問題は「関する」。ここの曖昧性を除くために非常にややこしいことを言っている。
- まず言葉の定義として、特許ライセンスの主体「コントリビュータ」と、コントリビュータによって作成された GPLv3 プログラムを示す「コントリビュータ・バージョン」という二つの言葉を導入。
- 肝心なのは、「コントリビュータ・バージョン」というのはコントリビュータが上流から GPLv3 プログラムを受領して改変した部分「だけでなく」、改変して作られた「ソフトウェア全体」を示すということ。
- そして、この「コントリビュータ・バージョン」について GPLv3 によって許諾されるすべての行為 (まあ利用・改変・再配布が主でしょうな) を行った場合に侵害する特許を「必須特許クレーム」という。
- コントリビュータ・バージョンは改変部分以外のすべてのものを含む訳であるから、もしコントリビュータの保有する特許Aが上流から受領したプログラムXの構成要件を満たす場合には、そこからコンベイしたプログラムYを配布する場合、特許Aも(自身が行った改変によって入ったわけでないにも関わらず)一緒にライセンスしなければならない。
- ただし、上流から受領した特許Aの構成要件を満たすプログラムXそのものはコントリビュータが改変したわけではないから、プログラムXおよびその(Y以外の)コンベイされたプログラムに対して、当該コントリビュータは特許侵害を主張することはできる。
- まず言葉の定義として、特許ライセンスの主体「コントリビュータ」と、コントリビュータによって作成された GPLv3 プログラムを示す「コントリビュータ・バージョン」という二つの言葉を導入。
- それって第10条第3パラグラフの「特許被係争義務」*1 に抵触するんじゃね?
- しますします。ので、これは「GPLv3 ライセンス違反となる = ソフトウェアの利用ができなくなる」リスクを負ってなお訴訟する場合の規定。
- 上記の例だとプログラムXおよびXからコンベイされたプログラムの権利者に特許侵害を主張したとすれば、もしかしたら勝てるかも知れない。
- けど自分がコントリビュートしたプログラムYおよびYからコンベイされたプログラムについては、「特許をライセンスしてるくせに、なにいうてんのアホか」と言われておしまい。
- どちらのケースにしてもケンカふっかけた時点で GPLv3 プログラムに対する権利すべてを失うことになる。
- しますします。ので、これは「GPLv3 ライセンス違反となる = ソフトウェアの利用ができなくなる」リスクを負ってなお訴訟する場合の規定。
- 厳しすぎない?
- そもそもFSFはソフトウェア特許を悪と考えているから、特許保持者が権利行使することに対して厳しくなるのは当然。
- だけども、特許を保持していないと「まったくの第三者が持っていた特許に GPLv3 プログラムが抵触していた」場合、それに対抗する手段がないから、特許を「取得する」ことに対して禁止することはしていない (というか、それを禁止してしまったら、多分産業界は採用してくれないし)。
- そういうことで、オープンソースのパテントについては権利行使しませんよ、という言質を取ることを狙ったものだと思う。
- なお標準化などでよく取られる方法で各社の関連パテントを一括管理して、標準を利用する場合に一括ライセンスアウトする「パテントプール」というものがあるんだけど、OSS の場合は例えば Linux についてのパテントを管理するOpen Invention Network という団体がある。
- 余談だけどここに一番パテント出してるのはどこをあろう IBM らしい[要出典]。
特許用語難しい!
著作権はそこそこ勉強してきたんで用語が耳慣れてきたけど、特許の用語はまた難しい。
ぼくは大企業にいて特許がそれなりに身近だからアレだけど、小さなソフトハウスさんだと「請求項」とか「構成要件」って言葉すら耳馴染みがないかもしれないですね。
それはぼくでもかろうじて説明できたんだけど、
- 均等論による侵害
- 間接侵害
- 寄与侵害
ってのは、まあ「文言上ズバリあたってなくても、侵害とみなされるケースがあるんだよね」ってことぐらいしか分かんなくてあれだった。
うーむ、あとで専門家にこっそり聞いてみるか……。
まとめ
やっぱりこういう小規模な集まりの方が最近楽しいのう。
幹事の awazo さんありがとです!
あと付き合ってくれたみなさんも!
*1:GPLv3 ライセンスを利用するにあたっては、当該ソフトウェアについて特許について争っちゃダメだよ、という奴。