第11回 GPLv3 逐条解説書 輪読会
前回 (d:id:naruoga:20100120:1264000587) に引き続き参加してきました。
公式ページはこちら。
相変わらず一人しゃべり状態だったので記憶が飛ばないうちにメモ。
今日は資料の第4章(条文で言えば第2条)、p.41の最後からp.42までの1ページちょっとしか進みませんでした。
私が喋りすぎたせいですスミマセンスミマセンスミマセン。
今日の主な論点。
内部的改変行為
- GPLv3 においては内部的変更行為 (例えば企業の社内インフラを構築するなど) は著作者の許可を得る必要はない。
- ただし、あくまでも GPLv3 の著作物であることは変わりないので、例えば変更に際して自社特許を適用した場合、特許非係争義務(第10条)を追うことになる。
- Q: 特許を出願しちゃいけないということ?
- A: たぶん NO。詳しくは第10条までのお楽しみだけど、出願そのものは制限されない。ただし、それを盾に他者がソフトウェアのコンベイを行うことを禁じてはいけないとかそういうことだと思う。
- Q: それじゃ特許を出す意味はないの?
- A: GPLv3 で使用した発明を守る(他者から侵害されない)ために特許を使いなさいという意味では。
- C: これも第10条のお楽しみだけど、クロスライセンス契約なんかについてはどんな風になっているか気になる
- Q: 特許を出願しちゃいけないということ?
法律とライセンス
- p.42 脚注より。
[36]わが国においては、プログラムを実行する行為自体には著作権が及ばないと解されている(判例・通説)。しかし、メモリ上への一時的な複製も著作権者の許諾が必要な「複製」に該当するとされている国もある。
プログラムの実行時にはプログラムがメモリ上に複製されるため、このような国の法律が準拠法となる場合は、実行についても著作権者の許諾が必要となる。しかし、GPLv3プログラムについては、本パラグラフの定めにより、著作権者の許諾なくして実行することが可能である。
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- これって法律をライセンスが上書きするということ?
- 厳密には、ライセンスは法律の上で成立するものだから、上書きというとちょっと違う気がする。
- ライセンスとは著作者が利用者に対して許可を与えるものだから、法律で「これこれは著作者の許可が必要ですよ」と言っていても、ライセンスで「それはやっていいですよ」と包括的に許可を与えていれば、個別に著作者に許可を取るにあたらないということ、ではないか。
- もう一つ同ページの脚注より。
[38]日本法上GPL を契約と見なせるかについては議論のあるところであるが(例えば、SOFTIC「オープンソース・ソフトウエアの現状と今後の課題について」(2004.10)参照)、契約と解する立場では、この承諾(GPLv3 第9 条第4 文参照)によりGPLv3 のライセンス契約が成立すると解することになろう。
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- GPLv3 が契約として成立しないということはどういうことか?
- ライセンスとは著作権者と使用者の間に結ばれる契約である。したがって GPL が契約とみなせないとなった場合、GPL が与えている種々の許可、あるいは種々の義務は意味をなさず、著作権法上の規程にしたがって個別的に判断されるということになるのではないか。
- ただしそもそも GPLv3 ソフトウェアを使用するということは GPLv3 を契約として認めたということだろうから(でないとライセンス;使用許諾を得ることができない)あまり問題にならないかも。
- 可能性があるとしたら GPLv3 の法的グレーゾーン(あるかどうかは分からないが)をついた利用者と著作権者の間で裁判となり、GPLv3 が契約の要件を満たさないという判例が出た場合。このときどうなるかは知りたいところ。
- 確か日本でOSSライセンスの有効性についての判決が出たケースがなかったと思う。海外だと Apache License や Artistic License はライセンスとして有効という判定が出たケースがあったと記憶している。
再びプロパゲートとコンベイ
あくまでも私流の解釈。
- そもそも論を考えると、GPLv2では「複製」「改変」「配布」だけしか考慮されていなかったので、それ以外の権利についてはどうよ? というのがプロパゲートとかコンベイとかいう概念を導入したもの。
- すごく大雑把にいってしまうとコンベイが GPLv2 で考慮されていた「複製」「改変」「配布」という権利。
- プロパゲートは「準拠法(日本の場合は著作権法)において著作権者の許可が必要だとされる行為すべて」
- プログラムじゃないものを例にあげると、音楽や演劇の場合の実演。
- この「実演」は知ってのとおり、CDやDVDを公衆の場で再生する行為も含まれる。
- しかしコンピュータプログラムにおいては日本の著作権法上、コンベイ以外の特別な権利は存在しないので、日本ではプロパゲートであるがコンベイである権利は存在しない。
- 大事なことは、プロパゲートというカバー範囲が広い概念を導入したことによって、さまざまな準拠法においても GPLv3 が扱う範囲が明確になった(準拠法で扱う範囲すべて、と言っているのだから漏れるはずがない)ということ。
- プログラムじゃないものを例にあげると、音楽や演劇の場合の実演。