レーザープリンターのOEMについてあれこれと
昨日なんとなくの流れでTwitterに(レーザー)プリンターのOEM話を書いたのでこっちにもこっそり転記しておく。インサイダーな情報はないはず。エンジンとかコントローラとかいう用語がわからない人はちょっと古いけどSoftware Design2012年10月号第二特集読んでください。というか、わからない人はこの記事読むの止めてお帰りいただいていいですよw
Software Design (ソフトウェア デザイン) 2012年 10月号 [雑誌]
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2012/09/18
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レーザープリンターの OEM 事情
えーとまず断っておきますがぼくは仕入れでラベル付け替えてキッティングして売るビジネスとOEMの違いがよくわかってません。のでどっちもまとめてOEMといいます。
プリンター買おうかなーと思ってカタログ見てると、なんとなく統一感がないというか、ちょっと変わってるぞコイツ? ってものがあるときがあります。そーゆーのは他社からのOEMだったりします。
プリンターのOEMというのはエンジンOEMといって作像部(作像も変換できんのかMozcたん)だけを供給してそれに自社のコントローラボードを乗っけるパターンと、まるっとOEMするパターンがございます。
エンジン OEM
エンジンOEMで有名なパターンだとHPのレーザープリンター。Canonからですね。自社製造はしてない。
コントローラは自社製で、PCL (Printer Control Language)はデファクトスタンダードとなっております。通称JetDirectというTCPのポート9100にデータをがーっと流しこむ方法は HP が考案した奴で、ポートモニターを書いて Windows 2000に標準で同梱してもらったためすっかりデファクトになりましたですねー。10年以上前の話ですがシリコンバレーのコストコに行くとHP LaserJet のトナーカートリッジがパレットに乗ったまま売ってました。それぐらい売れるってことですね。
よーはエンジンなんか作らないでもプリンターの世界は握れるってーことですわ。ここからなんで他のベンダーは学ばないんでしょうかねー。
逆にCanonは北米では自社製品が売れなくても勝手にトナーは売れていくのでウハウハです。まあ、だからリフィルビジネスには厳しくあたるわけですがねー。
なおCanonはギークのみんな大好きAppleのLaserWriterシリーズ(懐かしいなあ)のエンジンも供給しており、世界初の民生用レーザープリンター(のエンジン)という栄誉を持っている日本製造業の誇りの一つなんですよん。
えー、エンジン供給を受ける会社はみんな自社製造はしてないかというとそんなことはなく、自社でエンジン作ってる会社でも他社から購入して自社コントローラ載せて売ってる場合があります。なんでそんなことをするかというと、商品ラインナップの隙間を埋めたいけど、自社エンジンでちょうどいいやつがない、というパターンでしょうね。
たとえば、国内でLEDプリンターエンジン持ってるのって沖さんだけなんですよね(違ったらゴメンです)。なのでLEDプリンターって書いてあったらどの会社どのブランドから出ていても中身(エンジン)は沖さんってこと。あ、かといって他社からのトナー流用とかするとサポート受けられなくなるからやめようね。
逆のパターンで、自社製造のエンジンに海外からのコントローラを載せて売るということもあります。なんでそんなことすんの? ということですが、非常にざっくりいうとコスト下げるためがほとんどじゃないかな。歴史的理由もあって、国内のプリンターベンダーは独自PDLを搭載してることが多いんですが、独自PDLで世界市場で売れるのなんか古くから海外で販路を築いていたEPSONぐらいしかないんすよね。そうすると国内海外作り分けになりコストが嵩む。なので外から買ってくると。この話はまたあとで。
まるっとOEM
外部調達というのかもしれませんがわたしゃビジネスのことは分からんのでこういいます。
まるっとOEMだとDellさんは多分まるごと買ってラベルだけ張り替えて(ここは比喩ですよ、ホントの製造工程は違うでしょう)出荷してると思います。どこから買ってるとかは知らないけど、3〜4年前の記憶ではオペパネの日本語とかかなり腐ってたんで中華圏ではないかと予想。
日本だと各社独自でPDLを提供している関係上、このタイプのOEMはあんまり見ないですが、海外だとPDLなんかPCLとPSしか存在しないようなもんなので、この手の話はいっぱいあります。OEMとは関係ないけどAmazon専売モデルとかもありますよねえ。
帰国子女枠?
先程もちょろっと書きましたが、すごく乱暴に書くと国内向けのプリンターはどうしてもコントローラが高くなるんですよね。独自PDLなんか日本市場にしか出さないのに、開発コストはタダじゃないし、日本の顧客は細かいことうるせーから品質保証もたんまりやらないといけないし(一般論ですw)、大体PDL機ってのはそれなりにオツムがいるのでそれなりのハードウェアスペックがいるのにさらにスケールメリットしないとなると……ねえ。10万のプリンター作るならいいけど1万のプリンター作るとなるとしんどいとかね。例えばですけど。
で、台湾とかにいくと、「あーエンジンのインタフェース教えてくれたら海外で主流のPCLとPSの互換ソフト載せたボード提供してプリンターに仕立てまっせープリンタードライバーもおまけにつけまっせーオタクの会社のロゴもいれまっせー」って会社がぽつぽつあるんですねん*1。日本に比べると海外はコストコンシャスなので、じゃあもう海外向けはそれでもいいやって話になる。いや、プリンターベンダーはソリューション系で囲い込みやりたがるけど、社外コントローラだと囲い込みできないので、ホントに安い商品だけに限るんですけどね。
と、やっぱり安いし、それを日本でもカタログの人寄せパンダにすればいいんじゃないか、ってことになるわけで。これがいわゆる「帰国子女枠」。今命名。
帰国子女枠は:
- なんだか激安
- でもなんかあんまり売りたがってない雰囲気
- ソフトウェア仕様が他のプリンターと揃ってない(ソリューション系ソフトがサポート外だったり)
- PDL 仕様が「(謎言語)、PS互換」とかなってる
などといった特徴があります。私の観測ですが。
はい、最後注目ー。先程から「海外だとPCLとPS」といってたけど、PCLないじゃん。何その(謎言語)って。
んっとですね、国内だとPCLってぜんぜん知られていないし(私みたいな変な人は別ですよ)HPのPDLの互換?なにそれ?ってなってマーケティング効果ゼロなので名前隠したがるみたいなんすよ。なので、このたぐいは多分ですけど「PCLとPS互換」と考えていいと思います。ドライバーの構造とか見るとわかりますしSNMPなんかでインタプリターの一覧得ても一発ですね。
いや、もしかしたらホントに謎のバイナリな可能性があるので、買う前にドライバーダウンロードとかできるならチェックしたほうがいいと思います。ただ、そういうものが落ちてる可能性がある、ということです。
Linuxの人はPS使えれば夢は膨らむ膨らむって感じなので、この手の子、チェックしてみるといいんじゃないかな。
まあ、プリンターの世界もいろいろドロドロしていて面白い、と。今日はお茶飲み話でした。