周辺機器ベンダって Free OS に対してなにをするべきなんだろう?
えっと、このブログをごらんの方は私がプリンタベンダの社員であることをご存じだと思いますが、このブログまるごと私の所属する会社の見解とはまったく関係ないし、当然このエントリもそうです。
単なる一個人の妄想だと思ってくださいまし。
あと、ぜんぜんまとまってません。単なる与太話と思ってくださいませ。
ある Free OS において周辺機器がサポートされていないと、だいたい不満はベンダに行くような気がします。
いや、ベンダの努力不足はあるとは思いますが、その不満が「ドライバを出してくれない」というのに集中しているのを見ると、ちょっとそれ待て、と私は思うのです。
同じように、「この会社はドライバのデリバリーをきちんとしている、だから偉い」というのも、やっぱりどうなんだろう、と思うのです。
私はプリンタ屋なのでプリンタの話をするけど、Linux のプリンタ対応という意味ではやっぱり HP がダントツです。HPLIP というのは素晴らしい成果を出しているプロジェクトだと思います。印刷、スキャン、FAX送信を高いレベルで融合し、パフォーマンスを稼ぐためにバックエンド(通信モジュール)まで自前で書いてしまう馬力は、さすがに世界のプリンタベンダNo.1の力を感じます。
しかしながら、彼らの成果は「HPのユーザで」「LinuxまたはopenSolaris*1のユーザ」に限られています。そりゃそうです、彼らは営利企業ですから、投資対効果が薄いところにお金は出さない。彼らに限らずどのベンダだってそうでしょう。
そして、私の個人的な考え方としては、Free OS の魅力とは Free OS それ自体もそうだけども、「OS を選択する自由を提供してくれる」ところにあると考えていて、だからこそいろんな distro があり、いろんな OS があると思ってます。
という観点から見ると、HP にロックインされ、なおかつ Linux 以外は視野に入れない HPLIP を手放しで賞賛することに、私は疑問を呈したくなるのです。
技術的な詳細はさておき、ぶっちゃけた話、CUPS ベースのプリンタドライバなんて犬でも猫でも書けるんです。それぐらい簡単。
もちろん HPLIP の品質をといわれると大変だけど、ただ印刷できればいいよ、というユーザの要求に応えるだけならね。
ではなんでそんな簡単なことを HP 以外のベンダーはできないの?
出してるにしても On Time で出せないの?
想像ですけど、ベンダの冠をつけて出すからにはかっちり品質保証しないといけないとか、投資対効果を出さないとプロジェクトがGOできないとか、そういう、作りじゃないところが大変なんじゃないかと。
# 私の所属企業がどうであるかはご想像におまかせします。
ならば、標準化活動にパワーを入れるとか (仕様策定に参加するだけじゃなくてコードも書くとか)、Gutenprint のようなコミュニティベースのドライバを支援する (コードコミットしてもいいし、プリンタを貸与するとかでもいい) とか、仕様公開するから作ってくれたらウチのラボでテストするよとか、Google Summer of Code みたいに、学生さんにお金出して年に一回ドライバを作ってもらうとか、そういうやり方だってあるんじゃないの? というか、その方が Freedom という意味では楽しい世の中を作るんじゃないかなって、そんな風に夢想したりするのです。
単純に「コミュニティベースのドライバは機器のサポート状況にムラがあってアテにできない」「やっぱベンダ製プリンタドライバがないとダメ」「今あるxxの品質は最高だから、これ買っておけばOK」という主張でいいのか。
ベンダはそれぞれのビジネス判断に基づいてドライバを作ってリリースしてればいいのか。
まあ、私ごときの理想理念で人を動かすことができるとは思ってはいませんが、ベンダにドライバ出せというだけがいいことなのかどうか、というのは考えてもらえればうれしいな、と個人的に思ってます。
……などということを、某所で Gutenprint を勧めたらすごい勢いで dis られたことをきっかけに考えましたとさ。