おがさわらなるひこのオープンソースとかプログラミングとか印刷技術とか

おがさわらなるひこ @naru0ga が技術系で興味を持ったりなんだりしたことをたまーに書くブログです。最近はてなダイアリー放置しすぎて記事書くたびにはてな記法忘れるのではてなブログに移行しました。

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LibreOffice Asia Conferenceを開催してみた(あるいは、そういうのがあったらいいなと口走ってみた)

この記事はLibreOffice Advent Calendar 2019の24日目の記事です。なんと完走間近! 何年かやってますけど初めてです。うれしい。

さて今日のお話は、結論から先に書くと「こういうことできたらいいなー」と思ったら思いつきでも口走っておくと、行動力があるひとがなんか動いてくれていつのまにか実現したりするので、思慮浅く口走るの大事。って、内容です。むやみに長いです。

本題。タイトルのとおり、今年2019年は5月の25日、26日の両日、LibreOffice Asia Conference 2019(以下AsiaCon)というイベントを開催いたしました。

conf.libreoffice.jp

タイトルの通り、アジアにおけるLibreOfficeの関係者がいろいろ集まっていろいろセミナーを行ったり議論したりなんだりするというものです。

これはなんどかいろんなところで書いたり言ったりしてますが、LibreOfficeコミュニティにとっては「地域的であるけれども国際的」というイベントは初めてだったのです。

もちろんLibreOffice Conference(以下LibOCon)という年次カンファレンスがありますし、例えばヨーロッパのFOSDEMや台湾のCOSCUPのような国をまたいで参加者が集まるイベントにコアメンバーが登壇したりブース出したりはしてたのです。が、LibreOffice単独開催という意味では初。

このイベントがどういうきっかけでどんなふうに行われてどんなことを達成できたかって話は、今年のLibreOffice Conference 2019で発表したので、

www.slideshare.net

まあそのスライド読んでいただければいいのですが、ここではだらだらと日本語で思いつくことを書きたいと思います。

なおAsiaConそのもののレポートについては、日本語チームのブログの開催レポートおよびその写真レポート(前夜祭, 25日 カンファレンスデー, 26日 ビジネスデー&CJK HackFest, カンファレンス公式ツアー)、そしてgihyo.jpさんに掲載いただいた基調講演についてのレポートなどを参照してください。

gihyo.jp

なぜ今年にAsiaConが初開催?

雑にいってしまうと、「やろうぜ」って言われたから。誰からかって? 台湾のLibreOfficeコミュニティのリーダー格であり、TDFのマーケティング担当Board of DIrectorでもあるFranklin Weng氏にです。

じゃあ彼は唐突にそれを言ったかというと、きっかけがあって。ちょっと時間軸を逆に戻りつつ説明します。

2018年12月、OSC福岡の翌日に次のようなイベントをやりました。

connpass.com

ここに、台湾からFranklinが、韓国からDaeHyun Sungさんが来てくれまして。Franklinが「日本でもTDFのメンバーになることの重要性や寄付、認定制度といった内容について話すべきだ」というので私がそういう発表をしまして。

www.slideshare.net

そのときに「2017年にアジアで初めてのLibreOffice認定専門家向けの面接が台湾で行われたのだけど、来年の5月25日に東京でLibreOffice Kaigiやるんで、そこでリモートでもいいからアジア2回目の面接とかできたらいいんじゃないか、って個人的に考えてる」ってことをちらっと言ったんですね。

そしたら、2019年1月に、Franklinから「今年のKaigiを二日開催にしてAsiaConにしようぜ、そこにTDFから人呼んで認定面接もやろうぜ」ってメールが来たと。

って、俺がきっかけだったんだぜアピールになってますが、もちろんその更に前がありまして。2018年のLibOConで小笠原が日本と海外をつなぎたいよねみたいな発表をしまして*1

それを聞いてたLibreOffice/TDFの創始者メンバー、マーケティング・広報リーダーのItalo Vignoli氏が「我々ヨーロッパ人から見るとアジアは異質で、もっとローカルメンバーと話したい*2 からぜひ呼んでくれ」って言われたのと、そのとき一緒だったFranklinが「今年台湾は少し予算が余ってるから、なんか一緒にやろうぜ」って言ってくれて、まあItaloを呼ぶのはすぐはできないけどFranklinとなにかするぐらいはできるかなって、急遽企画したのが九州LibreOffice勉強会だったというわけ。

が、Franklinのその発言のさらに前には、2018年のCOSCUPにあわせて台北で開催されたLibreOffice meetupというイベントがあり、インドネシアのLibOコミュニティメンバーと台湾勢、そして日本からは榎さんが参加してくれて*3、そこでAsiaConやるのはどう? みたいな話は出ていたのです。なので「なんか一緒にやろうぜ」って話の土壌はそこ。

ではなぜCOSCUPにインドネシアからたくさん人が行ったか、Italoがなぜアジアに急に関心を寄せるようになったか。それは2018年1月のLibreOffice Conference IndonesiaってイベントにFranklinとItaloが参加して、さらにいうとItaloは2017年のCOSCUPにゲストとして呼ばれていて(もちろん呼んだのはFranklin)、……と。

そんなこんなで種まきは前からあったにせよ、2018年に一気につながって2019年に開催されたのですね。

なんで「Asia Conference」?

他のメンバー(日本語チームだけでなくFranklinなどグローバルのメンバーも)の思惑はわからないですが、私の発想は、はい、パクリです。どこからのパクリかというとそもそもはGNOME.Asia Summit。わたくしたまたま2014年、北京開催のときに行きまして。あーなるほどAsiaとかAPACみたいな枠で国際イベントって組み立てがあるんだいいなーって思ったのです。

日本からの唯一の一般参加者ということでスピーカー・スタッフ懇親会にも呼んでもらって(ありがたいことです)、「俺達共通語は英語になっちゃうけど、CJKとか共通の問題あるしタイムゾーンも地理的にも近いから、もっといっしょにできたら良いよね」みたいは話で盛り上がった。あと、けっこうみんな東京に来たがってるってことがわかったというですね。「次は東京開催で手を挙げろよ!」と言われたり。

話戻って、そのときにSUSE Chinaな人たちがブース出してて、「日本から来たの? 我々も今度Asiaイベントやるから運営手伝ってよ!」みたいな話に(なぜか)なり、で、同年のopenSUSE.Asia 2014も手伝ったと。

ということで、少なくとも私は折りに触れて「LibOでもAsiaなイベントあったらいいかもね」みたいなことは周囲に言っていたというのはあります。

イベントの裏側

あんまり裏話みたいなことを書いてもという気もするのでさらっと箇条書き。

  • Kaigi向けに25日だけおさえてたのに翌日26日でもいいですよと許可いただいた上、「できれば複数トラック開催できたら」「すみません言うの忘れてましたがプログラム組んでたら3トラックになっちゃいましたが可能ですか」みたいな酷い申し出も快く受けてくださったサイボウズの風穴さん、本当にありがとうございました。めちゃくちゃよい会場で参加者みんなめっちゃテンション高かったです
  • 我々団体格がないのでスポンサーさまからお金受け取ったりできないため、びぎねっとの宮原さんにOSPNとしてお財布をお願いしました。とても助かりました。コミュ症でちゃんとお礼できてなかったのでこの場にて改めまして。ありがとうございましたありがとうございました
  • 開催決まってからTrelloでタスク管理してたんですがカード減らなくてねえ……ちっともDONEにならない。そして長期化する週次ミーティング。つらかった
  • コアでうごく人いなくてスピーカー担当とスポンサー担当、会計という超重いタスクが榎さんに集中してしまって、それでもこなしてくれて、あらためてありがとうございました>榎さん
  • デザインワークは野方さんにおんぶにだっこ。忙しいようなのでWeb制作ぐらいわたしがやろうかなって思ったんですが20世紀的なHTML手書きしかできなかったので5秒で捨てられました。ははは。Middleman + Netlifyという技術選定だけは私がしました
  • TDF(Italo、Lothar)とのコンタクトを安部さんがやってくれたのはありがたかったです
  • 私は……前の月にSeleniumConf 2019の招致もちょっと手伝っていて。わたし健康不安*4 もあって、そっちもあんまり動けてなかったこともありギリギリまでタスク消化できなくて。前夜祭と懇親会、翌日のツアーぐらいがやったことかな
  • イベントレポートにも書きましたけどMark Hung氏に日本で話してもらおうというのはずっと願ってきたことなので実現できてほんとうによかったです。面白かったと思うんだけどなあ、SNSとかでも反響がイマイチ薄かったのが不思議
  • 26日のHackFest、集客がイマイチ&ちゃんと課題に取り組めた人があまりいなかったのがとても残念。あんなに東京でLibO開発者がそろうことはめったにないのに……自分自身がなにもできなかったことも含めもったいなかったです。これは東京ローカルな私の責任は大きくて、メンターお願いしたMarkには申し訳なかった
  • 大変でしたけど、久しぶりに一緒に活動できた人、名前だけ聞いたことあったけどちゃんと話したことなかった人と触れ合えてそれはとてもよかったですね

日本のLibreOfficeイベント〜歴史的な流れ〜

話戻して。2018年はAsiaCon開催のきっかけとなる年だよというのは書いたのですが、その前史というか。国内のLibOイベントの歴史を少々。

不確かな記憶では、私が初めてLibOConに参加した2011年秋よりあと、確かオープンソースカンファレンス2012 Aizuかな? でブース展示してたときに、日本語チームの大森さんとLibOConの話をして、「海外のカンファレンス一度は誘致したいね」「とはいえ一足飛びに海外はねえ」みたいな会話になって、そうそう2009年に台湾でDebian Miniconf Taiwanってイベントやったらしいっすよ、我々もまずはminiから初めて、コミュニティを大きくしたらいいんじゃない? みたいな話をするともなしにしたことをぼんやり覚えてます。

で、2013年の春のOSC東京にて「コミュニティ企画」というのを募集してて、それではそこでこないだ話してたmini conferenceやろうよってことで企画したのがLibreOffice mini conference 2013。なので最初から国際化は視野に入れてたのです。ほんとかな。個人的にはほんとうなんだけど。

それから2014年に第2回、ちょっと準備に手間取って2016年1月に第3回をやって、次はってことになったら2016年12月開催って話になり、そしたらminiconf 2016が二個になっちゃうじゃん、どうしよう、ってことで、「Kaigi」を名乗ることにしました。

もちろんこの名前はRubyKaigiからのパクリですが、(少なくとも私の脳内では)最初から世界を向いてたminiconfに対して、「日本語話者のための日本語話者によるイベント」で「会議」ってのはいいなあというのはありました。個人的にはそういう使い分けをしたいなと思ってます。なので2017年、openSUSE.Asia Conference 2017の中でやったのはminiconfとまあ、そういうわけ。

で、なんでここで歴史の話をするのかというと。

さきほど2018年にLibreOffice Conference Indonesiaというイベントがありましたという話をしました。その首謀者のAhmad Haris氏のブログ記事にこんな一節があります。

So we decide to organize conference about LibreOffice but small one (we can call it mini conference). But time flows, and we kick out “mini” and become normal conference.

彼らが最初「mini」って言ってたのは、どうやら我々の活動を見てたから、らしいんですね。

終わりに

なお今年は、6月にLibreOffice Latin America Conferenceというイベントも開催されましたが、どうやらこのイベントは2019年のFOSDEMにて「アジアがこういうイベントやるんだって?」「じゃあ、俺達もそういうイベントやろう」って始まったらしいです(FOSDEMは2月開催なので、そこから初めて6月にイベント実施するラテンパワーもまたすごい)。

こうやってぐるぐるつながってるのはホントに楽しいし、最初に書いたとおり、「こんなふうになってるといいな」って気軽に口走ったら、なんか世界がガンガン動いてて、自分がすべてのきっかけになったというつもりはないですが、まあ、その中の一つの要因ぐらいにはなってるのかな……と、少し嬉しい気持ちです。

まーとにかく、大変だったけどそれ以上に楽しかった。やってよかった!

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来年のAsiaConはまだ公式のアナウンスは出てませんが9月に台湾の嘉義市で行われます。大仰な物言いをすれば思いの連鎖をうまいことつないでいきたいですねー。

さて、明日のAdvent Calendarはいよいよオオトリ。meguro.junさんの「CALCで窓口省力化!」です。よろしくおねがいします!

*1:この発表はまあ、ぶっちゃけた話、LibOCon行きたいけど最近なんもしてないし発表するネタないなー、じゃあなんというかふわっとした観念的な話でもするかってことで苦し紛れなテーマです。内容はそんなに面白くないです。

*2:わざわざヨーロッパまでやってくる私みたいなやつは典型的な日本人ではないので……ということ。

*3:私もいくつもりだったんですが、金曜日成田発最終便のJetStarがまんまと門限に引っかかって飛ばなくて行けなかったんですよね……。

*4:そんな、大げさなもんじゃないですが。怠惰に病名がついてるようなもんか。SeleniumConfでもご迷惑おかけしました。すみません。ぺこり。