おがさわらなるひこのオープンソースとかプログラミングとか印刷技術とか

おがさわらなるひこ @naru0ga が技術系で興味を持ったりなんだりしたことをたまーに書くブログです。最近はてなダイアリー放置しすぎて記事書くたびにはてな記法忘れるのではてなブログに移行しました。

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ニュース翻訳とUI/ヘルプ翻訳の悩ましい関係

さて本日は上野翻訳カフェの日ということで気軽なエッセイ?をば。二日目にして息切れでスミマセン。

英語もできないくせに翻訳なんてものをやってる私でございますが、つくづく思うのは、ニュースの翻訳とUIやヘルプ (以下、記述を簡単にするために「やヘルプ」を省略します) の翻訳ってかなり気の使い方が違うな〜っていうアタリマエのことなんですね。共通することもいっぱいありますが、そうでない部分も多々ある。

ニュース翻訳という意味ではopenSUSE Weekly News 日本語版 (以下 ownja)*1 の一担当ということになってますし、UI については過去に CUPS 1.4.x の翻訳とか、今は LibreOffice の翻訳をやったりしてるんで、まぁその経験で。

ニュースはナマモノ、UI は長生きするもの

当たり前なんですけど、ニュースってナマモノなんですよね。ownja やってると思うのはなにせ「週刊」なんで、なるべくなら週の前半、遅くても木曜日ぐらいにはリリースしたい (って、締切守らないのは常に私なんですけど……)。だからある程度は拙速を尊ぶところがある。とはいえヘンテコな日本語を並べていてはニュース自体の価値が下がってしまうのが悩みどころ。細かくは後述しますけど、日本語で読む方には意味が乏しいような記事は大胆に省略して時間を稼いだりすることも必要になります。

一方で UI の方は、一度訳すとそれなりに長く使われるんですよね。だから最初のリリースではそれなりに腰を据えてクォリティを求める必要がある。ただこれはプロジェクトにもよって、LibreOffice については @ikunya さんの方針で「タイムベースリリースであることを最大限に活かし、変更は大胆に行おう」ということになってます。とはいえ、ニュースとはちょっと違った気遣いがいるのは確かです。

ニュースは読み物、UI は使う物

ニュースってやっぱり「読み物」なんですよね。ので、まずは日本語としてちゃんとしてることが重要。翻訳の議論でよくあるのが「分かりにくくて回りくどいけど英語の元の表現に近い翻訳と、読みやすいが原文から離れることがある翻訳とどっちがいいか」ということですが、ニュースの場合はゼッタイに後者です。可能なら硬いアナウンスは硬く訳し、カジュアルなブログはカジュアルに訳し、感情とかそういうものも掬い取りながら、なおかつギャグはギャグとして頑張って訳す、ということがニュースには求められます。また、日本語で読める別のソースがあるならそれへのリンクを張るとか、ブログやニュースの場合はコメント欄も読んで面白い議論についても補うとか、同じテーマについての複数の記事にあたるとかして、「読み物」として面白いものにすることが求められます。

一方で UI の場合は使われてナンボなので、やっぱりぱっと見てその機能がなんだかわかんなかったら意味がないわけです。それと共に、先ほども書いたように長生きものするものなので、原文から大胆に離れてしまったときに「で、なんでこの語がこういう訳語になってるんだっけ?」という情報が残ってないと結構辛いです。ので、面白さよりも、例えば他のアプリケーションでの使われ方とか、業界での定訳とか、そういうものをきちんと把握して訳す必要は大きいですね。

まとめちゃった割に破綻してますが、UI とヘルプはここの事情は多少違いますね。UI の場合、まんま翻訳するというより、「その機能がずばっと分かる短い語」を選ぶことのほうが大事です。一方でヘルプの場合は、UI のワーディングはもちろん合わせるにせよ、基本的には元の文章から大きく離れない方がよいように思います。つまり「分かりにくくて回りくどいけど英語の元の表現に近い翻訳」の方がよいことも多い、ということです。

ニュースは日本版、UI は日本

まぁこれもプロジェクトによってまちまちだと思うんですが、基本的にはやっぱりニュースは「日本版」だと思うんですよね。だから例えば、アメリカやドイツのイベントの CFP とか一生懸命訳すより、「こういうイベントがあるんだよー楽しそうだねー」って紹介をしたり、可能ならば日本やアジア地区で行われるイベント情報に差し替えるとかいった「ローカライズ」が必要に思います。そういうわけで、ニュースの場合「翻訳」の技術もそうですが、「編集」の技術も結構問われるように思います。

一方で UI は確実に「日本語版」として翻訳される必要があります。ローカライズは翻訳の視点ではなく、機能側で行われるべきところだからです。例えばデフォルトの用紙サイズを A4 にするかレターにするかは「英語か日本語か」ではなくて「北米かどうか」で決まる話ですから。当たり前ですね。

終わりに

うわー昨日よりはるかに書きなぐり記事だ (^^;

でもお分かりいただきたいのは、「実は大事なのは英語力じゃないんじゃねーか?」ってことなんですよね。つまりニュースにはニュースに、UI には UI に求められる翻訳というのがあり、「翻訳が目的に合致しているか」というのは TOEIC で何点という英語力よりも、もっと幅広い感覚が求められるんですね。だから査読って行為が大事なので。

ま、そんなわけで翻訳プロジェクト、みんなやろーぜ!

明日はね、えっと、川に行く予定なのであんまり書く時間が取れないかも。うーん、「GoPro で撮った H.264 の動画をモバイルデバイス用に Linux で変換してみる」とか……かな?

*1:年末になって英語版の編集長が「来年から本業が忙しくなるからもう続けるの無理!メンゴ!」ということになって、先行き不透明なわけですが……しくり。